学問・資格

決算書のチェックポイント ③

決算書のチェックポイントの3日目(最後)

3.株主資本等変動計算書

会社法の下では、株主総会の決議等により、「剰余金の配当」「純資産の変動」がいつでもできるようになった。

このため、貸借対照表や損益計算書の記載だけでは、株主資本に関わる項目の変動や連続性を把握しづらくなってしまった。、そこで期中の純資産の変動を適切に把握できるように「株主資本等変動計算書」を作成することになった。

※.会社法が施行される前は、資本の部(現・純資産の部)の変動は、利益処分計算書(利益処分案)、連結剰余金計算書という財務諸表だった。

株主資本等変動計算書は、純資産を「株主資本」「評価・換算差額等」「新株予約権」の3つに区分にして作成される。

※.連結株主資本等変動計算書では、「少数株主持分」が加わり4区分

株主資本の項目は変動した事由ごとに表示し、株主資本以外の項目は原則として、当期の変動の純額で表示する。

株主資本と株主資本以外の項目で取扱いが異なるのは、投資成果を表す純利益とそれを生み出す株主資本との関連に重きを置いているから。

(1).株主資本は、前期末残高、当期変動額および当期末残高に区分し、当期変動額は変動事由ごとにその金額を表示する。

変動事由の例として、次のものが含まれる。

①.当期純利益(または当期純損失)

②.新株の発行または自己株式の処分

③.剰余金の配当

④.自己株式の取得

⑤.自己株式の消却

⑥.企業結合による増加または分割型の会社分割による減少

⑦.株主資本の計数の変動

⑧.連結範囲の変動または持分法の適用範囲の変動

(2).株主資本以外の各項目は、前期末残高、当期変動額および当期末残高に区分する(当期変動額は純額で表示します)。

変動事由の例として、次のものが含まれる。

①.評価・換算差額等

(イ).その他有価証券評価差額金

(ロ).繰延ヘッジ損益

(ハ).為替換算調整勘定

②.新株予約権

(イ).新株予約権の発行

(ロ).新株予約権の取得

(ハ).新株予約権の行使

(ニ).新株予約権の失効

(ホ).自己新株予約権の消却

(ヘ).自己新株予約権の処分

③.少数株主持分

(イ).少数株主利益または少数株主損失

(ロ).連結子会社の増加(または減少)による少数株主持分の増減

(ハ).連結子会社株式の取得(または売却)による持分の増減

(ニ).連結子会社の増資による少数株主持分の増減

ただし、純額表示に代えて、主な変動事由とその金額を表示することができ、「株主資本等変動計算書」に表示する方法か、または、「注記」によって開示する方法かのいずれかを連結会計年度および事業年度ごとに、また、項目ごとに選択することができる。

表示方法の選択は、表示方法の継続性や中間・年度の首尾一貫性が求められていないけど、会計年度毎にまちまちというのは、計算書類を見る者にとって、読みづらいよね・・・、普通に考えれば、統一するでしょう。

(3).株主資本等変動計算書の注記

株主資本等変動計算書には注記が必要となる(以下の通り)。

①.連結上の注記事項

(イ).発行済株式の種類および総数に関する事項

(ロ).自己株式の種類および総数に関する事項

(ハ).新株予約権および自己新株予約権に関する事項

(ニ). 配当に関する事項

②.個別上の注記事項

(イ).自己株式の種類および総数に関する事項

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決算書のチェックポイント ②

決算書のチェックポイントの2日目

2.損益計算書のチェックポイント

会社の会計年度における経営成績(利益の大きさと発生源泉)を明らかにする損益計算書。

損益計算書の基本的なチェックポイントは、次の通り。

(1). 売上総利益(粗利益)

売上高から売上原価を差し引いたもの。ここでのマイナスって普通はないはず。

(2). 営業利益

売上総利益から販売費及び一般管理費(経費)を差し引いたもの。

(3). 経常利益

会社の本業と本業外を合わせた利益。

本業の営業利益に、営業外収益を加え、営業外費用を差し引いたもの。

営業利益よりも営業外収益が大きいのは、ちょっと考えものかも・・・

(4). 税引前当期利益

経常利益に土地や建物、有価証券の売却益である特別利益を加え、その損失である特別損失を差し引いたもの。

土地や建物の売買などで特別利益がその期だけ大きいなんてことがあると、本業の不調を資産売却がカバーしている可能性が高い(営業利益が縮小を意味しているので注意が必要)。

(5). 当期利益

税引前当期利益から法人税、住民税、事業税を引いたもの。

3.キャッシュフロー計算書のチェックポイント

会社の会計年度における獲得した資金と使った資金の流れを3つの区分(「営業活動によるキャッシュフロー」、「投資活動によるキャッシュフロー」、「財務活動によるキャッシュフロー」)で表したものが、キャッシュフロー計算書。

いくら利益が出ていてもキャッシュが手元に残っていなければ会社は倒産する。『黒字倒産』なんてことにならないためにも、キャッシュの動きはチェックが必要です。

キャッシュフロー計算書の基本的なチェックポイントは、次の通り。

(1). 営業活動によるキャッシュフロー

このキャッシュフローがマイナスになっている会社は、資金的に行き詰っている可能性があるので、注意が必要。

(2). 投資活動によるキャッシュフロー

このキャッシュフローがプラスの場合は、設備投資が不足している可能性がある。

(3). 財務活動によるキャッシュフロー

このキャッシュフローがプラスの場合は、その期に借入れがあった可能性が高い(借金の拡大を示している)。

ただし、成長企業の場合だと、マイナスになっていることが多い。

※.決算書をチェックするときは、単年度だけでなく、3期分をチェックすると良い。

【余 談】 融資の着眼点

(1).黒字であること

加えて、減価償却をきちんと計上していること。

(2).自己資本がプラスであること

自己資本がマイナス、つまり債務超過では厳しい。

(3).資産の中身そのもの

ゴルフ会員権、リゾート会員権など、本業と無関係の資産(雑資産)が多くないかを見る(少ないに越したことはない)。これらは売ることができるが、毎年利益を生む訳ではない。銀行は、融資したお金を経営者が会員権購入に当ててしまうのではないかと判断する場合がある。健全であることに越したことはない。

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決算書のチェックポイント ①

ゴールデンウィークが明けて、いよいよ6月の株主総会に向けて、企業の法務部や財務部、経理部などが総会準備に忙しくなってくる時期である。

株主が必ず目にするもの、それは事業報告ももちろん読むだろうけど、なんといっても決算書(計算書類)と株主配当である。

決算書は、企業の1年間の経営成績表であり、企業の経営体力をチェックする基本となる資料である。(貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書)

決算書のポイントについて見てみる。

1.貸借対照表のチェックポイント

会社の財政状態を知ることが出来る貸借対照表(バランスシート)

この貸借対照表と損益計算書を組み合わせた基本的なチェックポイントは次の通り。

(1). 収益性をチェック

「負債・資本合計÷売上高」で計算できるのが総資本回転率。

小さな元手でしっかりと本業の利益を生み出しているかを確認できる。

製造業では通常1~2回転程度、1回転以下なら注意すべし。

(2). おおまかな支払い能力をチェック

「流動資産÷流動負債」で計算できるのが流動比率。

短期的な手形や買掛金の支払い能力があるかどうかをおおまかにチェックできる。

200%付近なら良、200%以上なら最良。100%を切っているなら注意すべし。

(3). たな卸し資産を除いた支払い能力をチェック

「(流動資産-たな卸資産)÷流動負債」で計算できるのが当座比率。

90%以上あると良い。80%を切るっているなら注意すべし。

流動資産の中には、たな卸資産(在庫+原材料等)が含まれる。

(4). 売上がきちんと入金されているかどうかをチェック

「売上高÷(受取手形+売掛金)」で計算できるのが売上債権回転率。

3回転以下なら注意すべし。

(5). 不良在庫がないかどうかをチェック

「売上高÷たな卸資産」で計算できるのが商品回転率。

流通業で10回転以下、製造業で6回転以下なら注意すべし。

(6). 設備投資が適切かどうかをチェック

「売上高÷固定資産」で計算できるのが固定資産回転率。

製造業で1回転以下、流通業で2回転以下の場合、設備投資が過剰な可能性が高い。

逆に製造業で8回転以上、流通業で12回転以上の場合、設備投資が不足の可能性が高い。

(7). 設備投資が適切かどうかを異なる側面からチェック

「固定資産÷資本合計」で計算できるのが固定比率。

固定資産が資本の範囲に収まっているかどうかをチェック。

200%を超えると注意。

※.決算書をチェックするときは、単年度だけでなく、3期分をチェックすると良い。

損益計算書、キャッシュフロー計算書のポイントは、決算書のチェックポイント②につづく。

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英会話学習 ② (日本語を英語に訳さない)

昨日に続き、英会話学習の話です。

英会話の練習は、基本的な英語の表現をあまり意識しないで発音できるように反復練習することです。

また、主語や述語、目的語など文法的に分解しないことです。

表現の意味を知る必要はありますが、文法的な部分は、中学、高校で覚えた英文法で十分。

会話練習では、自分で英文を作らない事です。 → 英語で話すなら日本語を英語に訳さない。

英会話で話しながら文章を組み立てようとしても、十分な発音ができない状態では、話しながら文章を作ることは難しいのです。

日本語を話すときは、主語や述語がどうかなんて考えていませんが、無意識のうちに自分が思い浮かぶ表現を使っているわけで、文章を組み立てているのではありません。

日本語も日本人として、覚えている日本語の範囲で話しているわけで、文章の場合でも、癖はあるかも知れないけど、独創的な表現は非常に少ないはずです。

だから、英語の場合では、発音しながら作るのはとても難しいことなのです。たぶん、覚えた英語を思い出すくらいしか出来ないはずです。

英会話は、自分の音として発音できる文章を思い出し、覚えているままか、あるいは多少の単語の置換えと文の結合で話をしているのです。

だから、とにかく音で言える文章を覚えることが重要です。

ある程度の数の文章を覚えると単語の置き換えだけでなく、文章を一部変えたり、文章を結合したりしてかなりのバリエーションが作れるようになってきます。

また、文章をたくさん覚えると文章の聞き取りがラクになり、聞いて覚えることが可能になってきます。

そして、覚えた文章がバリエーションの基礎になります。

文書を音で覚えると、英語を聞いて直ぐに発音ができるようになってくるので、吸収できる会話の表現が増えていきます。

昔、アントニオ猪木さんが、会話はできるけど、書くほうは駄目といっていた記憶があるのだけど、これは、音から覚えた英語ということなのだろう。

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英会話学習 ① (音声の発音とリスニング、そして会話表現)

「生の正しい英語のインプット量に学習者の英語力は比例しない。」ということを聞いたことがある。

日本人は、中学から高校、あるいは大学卒業まで英語を勉強するけど、会話するための学習はほとんどしていない。

だから、学習者の英語力は「翻訳力」であり、「会話力」ではないので、「生の英語=英会話」という点では比例しないということなのだろう。

英語に対する苦手意識が強い国の代表は、「日本」と「韓国」であるそうだ。

たぶん、ドイツ語やフランス語などは、基本の語順が英語と同じでニュアンスもつかみやすいのに対して、日本語、韓国語は英語と語順が違い、ニュアンスもつかみにくいということが、最大の要因だと思うのだけどね。

だから、意思疎通するための英語を身につけようと本格的な英会話を話そうとするのであれば、最初から英語は膨大で複雑なものであるとの考えで勉強を始めたほうが懸命だそうだ。

英会話が目的ならば、膨大な英語の音声の発音とリスニング、そして会話に必要な表現や語彙を集中的に学習することです。

いろいろな音がある以上、幅の広い音を基に英会話を学習するのが最良の方法。

発音練習は、回数により発音しやくなるけど、それは単なる馴れによるもので、話し言葉を正しく効率的に覚えるのは話しことばである音声を聞いて、その音を覚える、そして音声を作るという反復練習が必要。

英会話の良くできない人は、英語を聞いて理解するだけで大変なのです(僕もそう)。自分の知っている表現を思い浮かべているうちに会話が先に進んでしまいます。

こんな英語レベルで、自分の言いたい英語表現をするとか、相手が言った言葉をその場で記憶に留める(覚える)のはとても無理なのです。

母国語である日本語も「オギャー」と生まれてから、日本語環境下で母音から一つずつ覚えたのよね。→ 日本語の場合には練習をしないで覚えた感じがあるけど、実は、私たちは生まれてから言葉を発するまでの1年から2年の間に時間をかけて発音やリスニングの練習をしていたのだ(ただ、幼いから練習している認識がないのよね)。

その積み重ねがあるから1回聞いただけでも、日本語の場合は記憶に残るわけで、日本語も会話をしている間にどんどん覚えたのでないことを私たちは忘れているんだ。

人間の脳は覚えていることを思い出すより、新しいことを覚える方が何倍も手間がかかる。

覚える意識を持って、その覚えることに集中することによって記憶が良くなる。「発音なら発音」の練習をする、「聴くならば聴く」練習をするという的を絞った学習が効果的だと思う。

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憲法記念日に「あたらしい憲法のはなし」を読む

De558919 僕が法律の勉強を進める中で出合った文章(本)で、「あたらしい憲法のはなし」というのがある。

この本は、文体は古いが、内容的には、決して現代にあっても古臭さはなく、憲法を判りやすく解説した本であると思っている。

「あたらしい憲法のはなし」は、昭和22年7月28日に翻刻印刷、昭和22年8月2日に翻刻 発行され、著作兼発行者文部省として発行された中学1年生用の社会の国定教科書である。

「翻刻」というのは、文部省が発行した教科書(国定教科書)の原版を、文部省が指定する教科書会社がそのまま印刷におこして発行したことをあらわしている。

上記のように、「あたらしい憲法のはなし」は、憲法施行間もなく、新憲法について政府が国民に対して明らかにした最初の公式解説書であり、義務教育で用いられた国定教科書であるのだ。

ただ、この教科書は、朝鮮戦争の勃発時GHQの指令に基づくポツダム政令で、自衛隊の前身である警察予備隊が総理府の機関として組織された1950年に文部省によって教科書から副読本に格下され、翌年には副読本としても廃止されてしまった。

憲法を勉強していると、憲法9条の解釈について、必ず講義を受けると思うが、「あたらしい憲法のはなし」では、戦争放棄を次のように記している。これが、解釈の原点だと思うのだけど・・・

『そこでこんどの憲法では、日本の國が、けっして二度と戦争をしないように、二つのことを決めました。その一つは、兵隊も軍艦も飛行機も、およそ戦争をするためのものは、いっさいもたないということです。これからさき日本には、陸軍も海軍も空軍もないのです。これを戦力の放棄といいます。「放棄」とは、「すててしまう」ということです。しかしみなさんは、けっして心ぼそく思うことはありません。日本は正しいことを、ほかの國よりさきに行ったのです。世の中に、正しいことぐらい強いものはありません。もう一つは、よその國と争いごとがおこったとき、けっして戦争によって、相手をまかして、じぶんのいいぶんをとおそうとしないということをきめたのです。おだやかにそうだんをして、きまりをつけようとしたのです。なぜならば、いくさをしかけることは、けっきょく、じぶんの國をほろぼすようなはめ になるからです。また、戦争とまでゆかずとも、國の力で、相手をおどすようなことは、いっさいしないことにきめたのです。そうしてよその國となかよくして、世界中の國が、よい友だ ちになってくれるようにすれば、日本の國は、さかえてゆけるのです。』

51b7fmp4nnl__ss500_復刻図書:『あたらしい憲法のはなし』(文庫)(童話屋,2001年2月,ISBN 4887470150)

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試験勉強について

試験勉強では、基礎が固まるまで、手を広げないほうが良いということは、誰もが判っている。

しかし、1冊すら完璧に消化できていないなんてケースは珍しくない。

ある本で、「基本書をちゃんと身につけた受験生は、ほぼ皆無なのです。みんな、ちゃらんぽらんにしか本を読んでいません。」ということを書いているものがあった。

さて、自分はどうかと考えてみると、成績が伸びた、結果が出たというものを振り返ってみると、確かに基本書でも問題集でも最後まで消化した確信のある科目は、成績が良かった。

たとえば、英語は、文法書を一冊に決めて完璧にして、あとは英文に出てくる単語を英文の中で覚えることを繰り返すというやり方で、英語の成績は伸びた。

以下に法律系択一試験に共通して使える考え方を書いてみた。

1.同じテキストを繰り返し読むことの本質は基本の思考回路を形成することにある。

同じ文章(テキスト)を読む、見ることを繰り返す。

これは意識的に同じ情報を脳に与え続けることを意味する。

この「パターン認識」によって、情報の流れが脳の中で整理され、基本の思考回路が形成される。

脳内の処理速度を引き上げるには、この基本の思考回路の構築が欠かせない。

スポーツで言えば、試合の時に自然に体が動くようになるまで、基本フォームの訓練を繰り返すようなものである。

2.正しい肢よりも誤りの肢を大切にする。

過去問の「誤りの肢」を「正しい肢」に変換できるようになるまで過去問を繰り返し解く。

正しく変換するためには、「どの法律の何条に該当の定めがあったか」、「判旨はどうであったか」などの基礎知識が必要である、それらの基礎知識があってこそ変換ができる。

「あの法律の何条に確かこんな定めがあったな、だから、この肢の誤りはここで、こう直せば正しい肢になるんだ。」、「この判旨は確かこうだったな、だから、ここが誤りで、こう直せばいいんだ」ということが、自力でできるようにならなければならない。

こうなるためには、該当の条文をまめに引き、テキストをまめに読むことを繰り返ししなければならない。

これらが正しくできるようになる頃には、頭の中に体系が構築され、解答力が上がっているはずである。

時間がかかる作業ではあるが、同じ過去問集を繰り返すことで、1度目よりは2度目、2度目よりは3度目、3度目よりは4度目と時間が短縮されていくはずである。

そして、試験では特殊な知識は要求されない。

ということはテキストの知識で充分に対応が可能ということである。

知らないことがあったから落ちるのではない、基礎が曖昧だから知らないことに惑わされたというのが事実なのである。

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法律力について

法律センスのことをリーガルマインドなんて言ったりするけど、

たとえば事例で

「Aさんから愛人Bさんに建物の贈与がありました。でも、さらにAさんは、友人Cさんに、この建物を譲渡していたなんてケースで、A、B、C間での建物の所有権はいずれにあるか?」を説明せよ。なんて問題を検討する場合、

問題を整理すると、

①まず、AからBへの建物の書面によらない贈与契約は履行が終わっているので、民法550条(書面によらない贈与の撤回)の但し書きによって、AはBとの贈与契約を取り消せない。

②そうだとしても、この贈与は、Bとの愛人関係維持のためになされたもので、民法90条(公序良俗違反)によって贈与契約は無効となる。

③でもね、判例では、民法708条(不法原因給付)によって、AはBに返還請求できず、その反射的効果として所有権はBに帰属するとするとされている。

これで、愛人Bが建物の所有権者となる。→ A対Bの権利関係がハッキリした。

④ところが、AはCにも、この建物を譲渡していたので、BとCは二重譲渡の関係にあることになる。

⑤さて、そこで、BとCの関係は、民法177条(不動産に関する物権の変動の対抗要件)で整理することになるのだが、Cが知っていた点で177条の適用を排除できないかが問題となる。

(補足)ある事実を知っていることを「悪意」、知らないことを「善意」という。

⑥Cが、単にAがBに建物を贈与していたことを知っていた(悪意)というだけでは、判例のいう背信的悪意者にあたらず、177条の適用を排除できない。

⑦それで、この二重譲渡においても177条の適用により、BC間の建物の所有関係は、先に法務局に建物所有権登記(対抗要件)を備えた方が所有権者となる。

登記の先後で優先する者(所有権者)が決まる。→ B対Cの権利関係がハッキリした。

これで、事例に対して、法を適用し、権利事実を明らかにすることができたわけだ。

上記のような愛人事例は、ビジネスの中で出会うことはほとんど無いと思うけど、以上のように、法律で問題解決を図ったり、法律を学ぶときには、「法的思考力」「法解釈力」の2つが求められる。

「法的思考力」は、論理的思考力バランス感覚利益状況の把握力の3つに分解できる。

そもそも、法が適用される場面というのは、上記事例のように利益の対立が発生している場面である。

「法的思考力」は、利益の対立をバランスよく解決し、論理的に説明するために必要な力である。

一方の「法解釈力」は、条文の趣旨を正確に読み取り、事象に適用する力ということになる。

51ppuwc2bdl__ss400_ 「法的思考力」「法解釈力」の2つのことを「法律力」として、分かりやすく説明されているのが、「法律力養成講座(荘司雅彦 著)日本実業出版社 刊」である。→憲法など六法について原則を解説している。

高度な事例解釈は要求されないまでも、社会人として、職場でのトラブルや売買契約でのトラブルなどに直面したとき、法的に見てなにが問題か、解決策かを少しでも考えられるように「労働基準法」「民法」の基本的なことは、最低限理解しておくべきだと思う。

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法人の特別清算

自分が所属している会社じゃ無いけど、関連会社を解散し、清算することになりそうだ。

破産、特別清算、任意整理と手法(スキーム)は、いくつかあるけど、どうやら債務絡みで特別清算の手法となりそうだ。

そこで、特別清算について、ポイントだけ整理してみた。(清算手順を整理して書いたら、たぶんブログが超長文になりそうなので割愛!)

特別清算って何だ?

・特別清算は、解散した株式会社に債務超過の疑いがある場合などに、債権者、清算人、監査役、または、株主の申立てによって裁判所の監督下で行われる清算。

※.清算会社に債務超過の疑いがあるときは、清算人に申立する義務がある。

・特別清算の大前提として、①株式会社であること、②解散していること、が必要。

(1).特別清算のメリット

・破産ほど手続が厳格でなく、簡易、迅速に会社を清算できる。

・会社が選任した清算人が財産の管理や処分を行える。

・破産に比べ、特別清算だと ”倒産” のニュアンスが薄れる。

→親会社が赤字不採算の子会社を消滅させたい場合に、

破産手続…社会的な影響が大きく、グループの信用を損なう恐れが強い。

特別清算…グループのイメージダウンを最小限にする効果あり。

(2).特別清算のデメリット

・特別清算手続を利用できる場合が限定される。

株式会社の解散には、株主総会の特別決議(総議決権の過半数の出席および出席した株主の議決権数の3分の2以上の賛成)が必要。(会社法第309条第2項第11号)

なので、100%子会社の場合(または親会社が子会社株式の大部分を保有している場合)や同族会社の場合でないと解散決議を可決させるのは容易じゃない。

・債権者に対する弁済計画となる協定案に対し、債権額の3分の2以上の同意が必要。(会社法第567条)

・特別清算では、破産の場合の管財人に認められる「否認権」と同様の制度がない。偏った弁済や財産減少行為の効力を否定できない。

・債権確定の制度がない。→早期の債権確定が困難。

(3).特別清算手続の手法(スキーム)

親会社が特別清算により子会社を整理する場合

・子会社の場合、株式は親会社がその大部分を所有→解散決議の成立は容易。

・問題は、協定案に対する債権者の同意→特別清算手続開始前に、親会社が子会社の債務を全て弁済するか、親会社が全ての債権を買い取るかして、子会社の債権者が親会社だけの状態にすると協定案は可決しやすい。

→ただし、協定回避に和解という手段もある。

・親会社だけが債権者の場合、親会社と子会社の間で「個別和解を成立」させれば、「協定と同じ効果が得られる」ため、協定案の作成・提出、協定案の債権者集会での可決、協定案の裁判所の認可という手続が不要になる。

・親会社による株式一本化と債権集約(買取り、弁済)による子会社整理は、税務上の損金処理でもメリットがある。つまり、親会社は、子会社整理損ではなく、債権の全額を貸倒損失として処理することができる。

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